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きままにひく引鉄

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マーセル・セロー『極北』感想

(出来るだけ伏せますが少しネタバレがあります。)

ずっと気になっていた本を読んだ。マーセル・セロー作の長編小説「極北」である。

この本が気になったきっかけは写真家星野道夫だった。

アラスカの地に焦がれ移り住みその地で若くして不運の死を迎えた彼の綴る優しい文章と写真に心惹かれ、自然と「極北」というワードを探すようになっていた。

確か2年ほど前にAmazonで極北に関する本がないかと探していた時にこの本を見つけたのだ。当時の評価は驚きの星5つ。

ハードカバーの小説だったので買うのを躊躇していたら2年も経ってしまった。

昨年6月 大学院入試の帰りに、もう落ちてもいいやどうにでもなれと思いながら大きな本屋を調べ、あればいいなあるかなと思いながら行ったらあった。

これはもう買うしかないと決意しとてつもなく久しぶりにハードカバー小説を買った。 

実際はこの物語に登場する”極北”はシベリアであり、星野が拠点としたアラスカではないのは知ってはいたのだが。

 

 

極北

極北

 

 

この小説の翻訳は村上春樹

あとがきによると原作者であるマーセル・セローの父親であるポール・セロー氏から紹介されて読み、面白いと感じたため訳そうと決めたらしい。

実は村上春樹が書いた長編小説を読んだことがなく、たまにネットでネタにされている印象しかなかったため文章に癖があったらどうしようと思っていたが杞憂だった。

 

 

この本は端的に言うと、一人の人間が厳しい極北の世界を生き抜く様を描いた物語である。

かつて多くの人が住んでいたであろう開拓地に一人で暮らす主人公メイクピース。物語は一人称で進む。

警察官として町を巡回する描写では人の指が落ちており、かつて凄惨な戦いがあったことが分かるとともに、メイクピースはタフで戦いなれていることが示される。

人さらいから逃げてきた少女ピングを匿うことになり、しばらく穏やかな生活をしていく二人。

そして訪れる突然のピングの死。この経緯は結局最後まで明かされることがなかった。が、裏を返せば メイクピースが語りたくもないほどのことであるということ で読者は考え得るだけの最悪の想像ができてしまう。あまりにも悲痛な様子のメイクピースをみて私は最悪の想像を放棄した。

その後メイクピースは街を出て旅を始める。旅をしている途中ある集落にたどり着くがそこの支配者によって裏切り者として追い立てられ、奴隷として送り出されることになる。

しかし持ち前の強さと頭の回転の良さからメイクピースはどんどん立場を向上させていき、ついには仮初めではあるが支配者側に立つようになる。

その後も展開は二転三転し、終盤は一気にSF色が強くなる。滅びた高い技術力を持つ文明の名残が描かれる。

最後にメイクピースはかつて共に暮らしたピングと同じになり、

この小説はメイクピースがある人物にあてた手紙の名残であることが明かされて終わる。 

 非常に骨太なストーリーだが展開は予測できなかった。読み終える瞬間思わず息を大きく吐いたことを憶えている。とても、面白かった。